真贋を見極める目を養おう


【再び業界に暗雲か】

 米国の信用力が低い個人向け住宅ローン(サブプライムローン)問題をきっかけにした市場の混乱は、大手金融機関の9月中間決算に大きな影響を及ぼしました。 また、6月20日施行された改正建築基準法をめぐり、確認審査の現場で混乱が起こっています。 耐震偽装の問題を契機として、厳格化された今回の改正建築基準法によって、この3~4ケ月間は確認審査がなかなか下りない状況が続いています。 7月の住宅着工統計は、前年同月期で23.4%の戸数減となっています。8月が住宅着工数は43.3%減、9月は44%減と、3ケ月連続で大幅な戸数減となりました。大都市圏の新築マンションの着工件数は61.1%の戸数減と厳しい落ち込みです。この改正建築基準法は、木造で“高さ13m超、また軒の高さ9m超’’RC造で“高さ20m超”という一定の高さ以上の建築物について、知事が指定する構造計算適合性判定機関の構造計算審査を義務付けています。ピアチェックといわれるものです。これらにより判定業務がさらに滞り、混乱は続くことでしょう。サブプライムローン、改正建築基準法と、この二つの問題が不動産業界にも大きな影響を及ぼすであろうことは必至です。

【見極める目がすべて】

 私が不動産業をはじめた1969(昭和44)年の時代から15年間、利益を投下して買い求めた土地が、現在でも高い価格を維持しています。バブル期には最高値をつけた土地は、バブル崩壊とともに大幅な下落に転じました。不動産は、現在、首都圏、東京中心地においてはバブル期以上の価格となってることは間違いのない事実です。見る目が正しければ、取得した不動産を、そのまま持ち続けることで、大きな運用利益を上げることになります。株も同じようにバブル期には最高値、崩壊時は最低値となりました。私がビジネスを開始した当時の、たとえば、鹿島建設、清水建設、小田急電鉄、食品のキューピーの株などを、そのまま持ち続ければ、間違いなく痛手を負うことにはならなかったはずです。 不動産や株も、売り買いする間に、価値のないものにまで手を出すとすれば、損失を被ることにもなりかねません。要は、不動産、株を見極める目がすべてであると思います。いいものと見定め買い求めたものは、そのまま持ち続けていれば、やたら損をすることはない、というのが私の40年間の不動産事業経験から得た教訓です。

【古いものの真価】

 福田康夫首相が提唱した、「200年住宅ビジョン」(平成19年5月、自由民主党政務調査会住宅土地調査会長・福田康夫)があります。これには『より長く大事に、より豊かに、より優しく』 ―住宅改革・豊かな生活―の副題がついています。同ビジョンは、わが国の現状を「成熟社会にふさわしい豊かさが実感できていない」さらに「少子高齢化の進展による福祉負担の増大」「地球環境問題-廃棄物問題の深刻化」のフロー消費型の社会から、「いいものをつくって、きちんと手入れして、長く大切に使う」ストック型社会への転換が急務としています。具体的方策として12項目を提言していますが、このことについては後に譲ることにしましょう。英国の首都ロンドンで、15世紀に造った住宅が18~19世紀時代に造ったものの倍近い価格がしています。いま、ロンドンでも、小さな貸し部屋が25万円程度の家賃となっています。同じ広さの貸し部屋が、賃貸価格が高いといわれる日本では、おそらく10万円はしないでしょう。まして13世紀の住宅は、15世紀のものよりもっと高く評価されています。また、希少価値であろうとも考えられます。今回は、いまの社会情勢の中で不動産業界が、仮に大きな打撃を受けたとしても、しっかりとした目を持ち、英国の泰然自若とした姿勢などをしっかりと学び取り、今後は、時空を超えた発想を大切にする必要がある、と痛感します。

(社)全日本不動産協会 神奈川県本部
本部長 中村 直利


| 投稿時間 : 2007年12月17日 15:44

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